グラスの中が水っぽくなっていた。指で氷を回していたら、脳ミソがカランコロンと鳴った。隣のカップルの会話が聞こえてきた。「…奄美大島に行ってきたよ」と30代後半(たぶん)の男。「えー、いいなー」と20代後半の(たぶん)女。「奄美、行ったことある?」「ない。行きたい」「暇で、海辺でずっと貝を拾ってたよ」「えー、素敵ー!」とまあ、こんなような会話。あのー。奄美にわざわざ行ったんですよね。きっと何かをしに。それなのに、なんで暇なの? 暇で貝を拾ってた? なんでよ。貝を拾いにわざわざ奄美に行ったのか?「はいこれ、その時の貝殻。プレゼント」「かわいい!」。というところで店を出た。なにも文句はない。それどころか微笑ましい。ただサイズの合わない帽子を無理矢理被ったような感じがしただけだ。こんな夜もある。こんな夜ばかりじゃないといいんだけど。
あしたも、ぜんぶ、生きようね。おやすみなさい、悪いコたち

