昨日の青空は美しかった。深く、かつ透明な青だった。モンゴルの大草原の青色はこんなかんじだろうかと想像した。翌日の早朝、よほど昨日の空が印象に残ったのだろう。半ば眠った頭で青空が見たいとかんじた。時計は5時半を少し回っている。窓辺に立つと昨日ほどではなかったけれど、それでも東の空がうっすらと淡い青になっている。これはマーラーの5番(交響曲第5番 第4楽章)である。時間がゆっくり止まった。明け方の空にマーラーの交響曲5番が流れる。そのとき僕は「ヴェニスに死す」のなかにいた。闇のなかから客船のシルエットが現れる。汽笛が響く。僕は甲板に出て夜明けが近づくベニスを見つめている。船が到着する頃にはすっかり日が昇っている。深い紺青は消え、僕が眺めてるのもベニスではなく富士山に変わっている。僕は世田谷の朝を眺めている。空は、都内にあって、広い。富士山は昨日初冠雪を記録したという。富士山から目線をぐぐぐっと足もとの方まで下げれば、猫の額ほどの畑にかぼすと大根の葉が見える。猫の額ほどの畑を黒猫が散歩をしているのが見える。きれいにならされた黒土の上にいくつものちいさな足跡をつけて草むらに消えた。カラスが一声鳴いた。カラダが冷えてきたのでベッドに入り直した。ワールドシリーズの第一線は明日からだったよな、と自分に念を押してもう一度目をつむった。松井、打てるかな?
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