笑いクラゲ

ファミレスでカレーを食べていた。何気なく顔をあげると、前のボックス席にいた4歳くらいの女の子と目が合った。母親はママ友らしき4人でおしゃべりをしていた。女の子は身体をひねって僕を凝視していた。井戸の底を覗き込むように真剣な表情だった。水面に浮いているものが、ゴミなのかそれとも得体の知れない生き物なのか探るように。しかも至近距離である。それは水族館のガラス越しにカワハギと向き合っているようなかんじがした(水族館にカワハギがいるかどうかはあやしい)。否応なく発生するある種の緊張感のようなものを回避するために僕は口だけで「コンニチハ」と笑顔をつくってなごませようと試みた。無反応 だった。無視すればいいのだけえれど、それでは面白くないので睨みつけてみた。女の子相手に数秒間メンチを切るようなかっこうになった。大人げない。実に。でもまあこれで前を向くだろうとおもった。ところが女の子の表情がさっと変わった。ああ。泣くのか。面倒だなとおもったそのとき、破顔した。そしてうれしくて仕方ないといったように全身をくねらせはじめた。それに気づいた母親が「前を向いて!」と女の子の腕を引っ張る。でも僕を見ながらニタニタくねくねをやめない。笑いクラゲという生きものがいたらこんなかんじだろう。僕がレジに向かうあいだも、ずっとニタニタくねくねのまま僕を見ていた。よほど何かが気に入ったのだろう。世の中は不思議でいっぱいだ。コミュニケーションは易くもあり難しくもある。幼子よ、なにがそんな にうれしかったんだ?キミがハタチ以上の女性だとしても、同じように反応してくれるかな?

あしたも、ぜんぶ、生きようね。おやすみなさい、悪いコたち。

Comment

CAPTCHA


This post doesn't have any comment. Be the first one!

hide comments
ShareTw.Fb.Pin.
...

This is a unique website which will require a more modern browser to work!

Please upgrade today!