
「たまにはわかりやすくて親しみやすい演奏もいいじゃん、ほら、難しい顔ばっかしてないで、ムード出して、さ、レコーディングレコーディング」とプロデューサーが言ったかどうかはわからないけれど、軽い雰囲気の中でBlladsは生まれたような気がする。とにかく肩の力の抜け具合が素晴らしい。野球で言うなら、伸びのあるストレート。それは一曲目から現れる。サティスファクションのように、ロックは曲の始まりですべてが決まるようなカッコよさがあるけれど、コルトレーンのBalladsものっけからもっていかれるマジックがかかっている。

そのかんじはジョニー・ハートマンとのこのアルバムにも言える。コルトレーンのテナーとジョニーさんの声がいいバランスを作っている。この俗にいうバラード3部作を知ったのは高校2年の夏だった。高校生にとってLP1枚は高額だった。当然3枚まとめて買えるはずもなく、全部が揃うのには1年くらいかかったんじゃないかと記憶している。

Balladsは、人が聴いているとなんだか悔しくなる一枚だ。なにが悔しいのか自分でもよくわからないけれど、ものすごく突拍子もないたとえをすると、昔から付き合っているガールフレンドのデートを目撃してしまったような悔しさである。そんなときはすぐに電話(いまだったらメールかな)してデートの約束を取り付ける、じゃなかった、家に帰ってBalladsを聴く。ちなみにAmazonで探してみると、なんと輸入版セールで980円で売っていた。これはいくらなんでも安すぎるんじゃないだろうか。LPを苦労して買った頃と比較はできないけれど、高校時代の思い出までもが安くなってしまったような寂しい感じがしたナ。
