あの日のうなぎ少年。

子どもの頃の思い出を聞かれ、まっ先に浮かぶのはうなぎ。といっても食べた記憶じゃなくさばかれる様子です。週末になると母親と出かけた駅前の小さなデパートの一角に、そのうなぎ屋はありました。店の脇ではうなぎをさばいていて、僕はガラス越しにその様子を凝視するうなぎ少年なのでした。桶からつかみ出したうなうなしているうなぎの首に、キリのようなものを「とん」と置き「すー」と身を開く。とん、すー。とん、すー。買い物を終えた母親が迎えに来るまで僕はそこを動かなかった。魅入られちゃったというか、その儀式めいた一連の動作に、どことなくいわく言いがたい力があったんでしょうね。今は食べるばかりになったけど、いつまでも特殊な雰囲気をもった食べものにうつるのは、きっとあの日にうなぎ少年がいたからですね。今夜はうなぎかな。

あしたも、ぜんぶ、生きようね。おやすみなさい、悪いコたち。

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