喫茶店のナポリタンは正しい。

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午後3時すぎに喫茶店に入る。年配の女性とさほど年配でもない女性の二人がカウンターにいた。はじめての店だった。珈琲のほかにはレモンスカッシュとコーラとサンドイッチとオムライスとナポリタンがあった。30年くらいはメニューが変わっていないかんじがする。常連らしき男性客がカウンターのはじで煙草をくわえてスポーツ紙をひろげている。テレビでは時代劇が流れている。コーナーのラックに少年ジャンプとモーニングが積まれていた。活気とかやる気といったものはまったく見受けられない。僕はオムライスを注文して、ケータイをチェックした。そこへ客が一人で入ってきた。スーツを着たひょろっとした体躯の白人で、どうにも場違いなかんじがする。しばらくして運ばれてきた小さくて味の薄いオムライスを食べながら音の聞こえない時代劇を見ていた。僕が食べ終わる頃、白人客の前に注文した皿が置かれた。ナポリタンだった。僕は会計をしにレジに立った。そのとき、運んできたさほど年配でもないほうの店の女性に向かって何かを訴えるように言っている白人客の声が聞こえた。英語だった。声のトーンが高い。どうやら「これはナポリタンではない」と言っている。女性が注文を間違えたのではなく、ナポリタンに文句があるようだ。白人客は「ナポリタンとはナポリのものだろう、ナポリは海辺の街だ、ならば魚介類が入っていないのはおかしい、よってこれは(私の思う)ナポリタンではない」というようなことを言っている。そんな、あなた、いくら日本が弱腰といってもね、外国人が主張すればなんでも通るってもんじゃないからね、と思っていたけど、女性店員は何もなかったようにカウンターに戻っていった。僕の会計をしている年配の女性もまったく動じない。僕もすーっと店を出た。

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